落ちるのは突然のこと

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「何か飲むか? それともシャワー浴びるか、もう寝るか」 「部屋のセンスが良すぎて目が冴えた。かっこいいね」  久世はそれを聞いて再び微笑むと、思い立ったようにカクテルを作り始めた。 「雅紀と飲んだ店のカクテルが美味かったから、少し興味が湧いた」  そう言って、生田にグラスを差し出した。 「ありがとう」  生田は口をつけると目を丸くして、一気に飲み干した。 「美味っ! あの店のよりずっと美味しい」  そう言った生田の晴れの日のような笑顔に、久世は顔を赤くした。 「最高だね。こんな部屋でこんな美味しいカクテルを飲むなんて、なんと贅沢な! あー、帰りたくない」  言いながら生田はソファに腰を下ろした。  久世は二杯目のカクテルと灰皿を持って生田の横に座る。  差し出されたカクテルを口につけた生田は、先程とはまた違った美味しさに笑みを大きくした。 「透、天才! 才能あるよ」  そう言った生田はシャツの胸ポケットから煙草を取り出すと辺りを探すようにキョロキョロとした。サイドテーブルの上に置かれた灰皿を見て、久世の配慮に感動した。
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