落ちるのは突然のこと

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 久世にとってカクテル作りなんて大したことはないのだろう。自分もある程度なら何でもこなすことはできるが、久世はそのレベルが違う。  難関大学で院にまで進み、大企業から声がかかっている男なのだ。それに加えて人のためにあれこれ先回りして世話を焼く。とてもではないが真似ができない。  しかし、ただでさえ忙しい身でありながら、こんな細かい所にまで気を配っていて疲れないのだろうか。  これだけの男なのだから、気立ての良い彼女か誰かがいるのかもしれない。その(ひと)に甘えるなり癒されるなりしてストレスを発散しているのだろうか。  生田はそう一人で思いを巡らせて微笑を浮かべたが、久世に特別な人がいること、そして自分の知らない面をその彼女にだけは見せているのだと考えると、軽い嫉妬のようなものを覚えた。  好奇心に駆られた生田は、シャワーを浴びたいからと言って、バスルームを借りることにした。
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