落ちるのは突然のこと

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 今、目の前にいるのが互いに了承し合って連れ込んだ女性であったのなら、迷うことなくベッドへ連れて行っただろう、そんな興奮が(たぎ)った。  いや、その場合は最初からそのつもりで一緒にいた相手なのだ。久世はただ友人として一緒にいるだけなのに、なぜこんな気持ちになってしまうのか。  生田は混乱と興奮で倒れそうだった。  声をかけても反応を見せず、みるみる顔が赤くなり立っているのも辛そうな生田を見て、久世は熱でも出したのかと心配になった。 「雅紀、具合いが悪いのではないか」  久世は生田を支えるようにして、ベッドルームへと誘導する。 「えっ、いや、だいじょうぶ」  生田はいきなり久世に触れられてパニックに陥った。  ベッドルームはこれまた物がなくこざっぱりとしていて、深い青の壁紙と、ヴァイオレットの絨毯が隠し部屋のような雰囲気を出している。歩くと沈み込むような絨毯を進むと、ベッドはキングサイズだろうか、部屋の真ん中に堂々と置かれていて迫力がある。
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