落ちるのは突然のこと

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 久世はシャワーを浴びようとしていたのか、シャツを脱いでいるところだった。  生田が来るとちらりと一瞥しただけですぐに視線を逸らせた。 「寝た方がいい」 「違うんだ、その、透も悪いけど、僕が一番悪い」  久世は片眉をあげて視線を生田に戻した。 「あー、もう! 酔っ払ってる、酔っ払ってるよ僕は!」  生田が声を荒げた。 「酔っ払っているから、ちょっとおかしくなったんだ。わかるだろ?」  生田は久世の表情を伺う。生田から視線は外していないが変化は感じられない。 「その、あるだろう? 男なら」  久世は生田の言葉が上手く理解できずにきょとんとしている。 「だから、そういう顔をするから!」  生田は自分でもわからないままに言葉を発してしまっている。 「透は男だけど、なんかこう……抱き締めたくなったんだよ!」  生田は言ってしまって恥ずかしさと後悔が一度に襲ってきた。  久世の反応を見れずに下を向き、そのまま寝室へと足早に去った。
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