二つに一つ

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二つに一つ

「雅紀、起きろ」  久世の低い優しげな声で生田は目覚めた。  一瞬どこにいるのかわからなかったが、すぐに思い出して飛び起きた。 「何時?」 「大丈夫だ。午後からでもいいんだろう? 十分間に合う」  その言葉で安堵した生田は、再びベッドへ倒れ込んだ。 「いや、でももう起きてくれ」  生田はのろのろとベッドから降りてリビングへと向かう。 「着替えはそれでいいか? すぐには食べられないかもしれないから朝食は使い捨ての容器に入れてあの紙袋に入っている」  久世は生田のバッグの横にある紙袋を指した。 「まず水を飲め」  コップをサイドテーブルの上へ置いて、生田にソファに座れと暗に誘導した。  生田が欠伸をしながら腰を下ろすと、久世はおずおずと再び口を開いた。 「雅紀、昨日のあれは……」  生田は急いで水を飲み干して、立ち上がった。 「洗面借りるよ」  足早にバスルームへ消えていく生田を目で追ったあと、久世は諦めた様子で立ちあがった。
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