二つに一つ

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 天国か地獄の二つに一つ。しかしそんな賭けをしてしまったら元には戻れない。  友達に戻ることはできない。  ああ、いったいどうしたらいいのか。  久世はそれからの一週間、論文の執筆をしながらもふとした時に生田を思い出し、悶々とした気持ちで過ごした。  しかし、執筆作業が佳境に入った週末は、徐々に生田のことを考える時間が少なくなっていった。  二週間経ち、三週間経ったときに論文が完成した。  久世はまず准教授に提出してチェックをしてもらった。さらに一週間かけて修正した論文を教授に送ると、とりあえずの承認を得ることができて、ようやく執筆作業から解放された。  安堵したその瞬間、急に生田のことを思い出した。  一ヶ月もの間執筆作業に集中していたため、ろくにスマホを見ることもなく完全に忘れていた。  よくも愛する人のことを忘れていられたものだと自分に呆れながらも、生田からも連絡がなかったことに気がつくと、久世は動揺した。  三週連続で週末を過ごした生田と、一ヶ月間一切連絡を取っていない。  熱して冷めた友情だったというのか。  久世は再び眠れぬ夜を過ごした。
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