二つに一つ

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 考えた揚げ句に何もせず待っているよりはと考えて、生田にメールを送った。  一晩待っても返信がないどころか既読にもならない。  案じた久世は、仕事の時間を避けて電話をかけた。  何度コールしても繋がらない。  時間を空けて三回かけたが、どれも結果は同じだった。  あの一夜で嫌われたとでも言うのか?  いや、それでも金を貸したはずだ。生田はそのままにするような人間ではない。  久世は再び悩んだ挙げ句、俊介に電話をかけた。 『なんだ、珍しいな。ちょっと待て』  その声の後、くぐもった音でかすかに俊介の声が聞こえ、ガサガサと大きな音が鳴ったと思うと、再び明瞭な声が聞こえてきた。 『悪い悪い、接待中で』 「悪かった」 『いや、いいんだ。大した相手じゃない。ご馳走目当てのお得意さんだ。それよりどうした? 珍しいな。お前が掛けてくるなんて相当だぞ」 「ああ。……あの、雅紀ーー」 『あ、雅紀から連絡あった?』  被せて話しかけるとは、さすが潰れるまで飲んで友人に迷惑をかせても平気でいられる神経の男だ。 「その雅紀と連絡がとれなくてお前に聞こうとしたんだ」 『ああ、そういうこと』
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