二つに一つ

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「それで雅紀がどうしたんだ?」 『あの、実家のお母さんが、あ、あいつお母さんと兄貴しかいないんだけど、家族は。で、そのお母さんが入院したみたいで、兄貴が帰れないから、あいつが付き添ってるんだよ。えーっと一ヶ月くらい前だっけ? あー、覚えてねー。えーっと、平日だったけど、多分それくらい。兄貴の方が俺と同級生だからあいつとはよく話すんだけど、それで兄貴の方から聞いたわけ。今転勤で沖縄だし、管理職だから抜けられないんだ、その兄貴の方は。それで……』  酔っ払っているからかダラダラと脈絡なく話す俊介に苛々としてきた久世は、とうとう口を挟んだ。 「わかった。事情は理解した。恩に着る。雅紀の実家の住所を教えてくれ」 『は? なんで』 「必要だからだ」 『なんで? えーっと、どこだったっけ。知らねーよ住所なんて。俺の実家の近くだからー……あ、はい! 戻ります。すまん、透、戻らなきゃならん』  いきなり小声になった。 「わかった。それでは、お前の実家の住所を教えてくれ」 『えーっと、今言っていい? LINEする余裕ないと思うから』  久世は俊介の実家の住所を聞き取ると、スマホですぐに場所をチェックした。俊介は生田の実家であるアパートの名前と部屋番号まで教えてくれたので、俊介の実家住所がわかれば探せるだろうと考えた。  久世は荷造りをして、その日のうちに青森へと飛んだ。
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