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『あ、ごめん。いいよ。えっと、今どこにいるの?』
久世が今いるコンビニの場所を説明する。
『あー、めっちゃ近いな』
生田はそこで少し笑った。
『どうしよう。多分そこから見えると思う。アパートなんだけど。どうしよう。えーっと……』
「誰かと一緒にいるのか? それなら明日改めて連絡する」
『うーん、そうだなー、そうしてもらおうか……。いや、ちょっと待って。そっちに行く』
「いや」
『待ってて』
その声で通話は切れた。
久世が帰ろうかと躊躇っていると、すぐ後に生田の声が聞こえてきた。
「おーい、透~」
久世が声のする方へ振り向くと、片手を上げてこちらに向かって走ってくる生田の姿があった。
「ごめんごめん、来てくれてありがとう。本当に世話焼きだな」
生田はいつもの眩しいほどの笑顔を久世に向ける。
「突然来て申し訳ない。メールも電話も、その」
「ごめん、母親のことがあってバタバタしてて」
その時久世は確かに見た。
生田が走り寄ってきた時、出てきたであろう方角にあるアパートの階段を降りていく女性の姿を。
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