二つに一つ

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 そこはやはり女性が出てきたアパートだった。  階段を上がってすぐ手前のドアに、鍵も開けずに生田は入った。 「透には我慢ができないかも。ごめん、かなり散らかってる」  アパートは築うん十年は経っているであろう趣のある様相で、部屋は玄関を入ってすぐにダイニングを兼ねたキッチンがあり、そこから出入りできるようにと作られた、おそらくはトイレと浴室であろうドアが二つあった。  奥にはリビングとして使っているであろう、6畳ほどの和室と、その隣にも同じくらいの大きさの和室が襖で仕切られてあった。 「片付ける暇はあるのにダメだね僕は」  生田は自嘲気味に笑った。  奥の和室にはこたつがあり、そこの座布団に座るようにと生田が久世を誘導した。  生田はコンビニ袋の中のアルコール類を冷蔵庫に手際よくしまい込み、もう一つの袋と缶ビールを二本持って久世のところへ戻ってきた。 「あー、正座とか足痛くなるよ」  生田はニヤニヤしながら言った。 「ありがとう」  顔を赤らめつつ、生田から差し出された缶ビールを受け取って、久世は足を崩した。
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