二つに一つ

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「透はビールなんて飲まないか。考えなしに買ってしまって申し訳ない。もう既にちょっと酔ってるから」  プルを開けて飲み始めた。 「いや、たまには飲む」  久世もそれに倣って一口すすった。 「えーっとね、母親は急性白血病だった」  生田はなんでもないことのようにサラリと言った。 「えっ」 「一ヶ月くらい前に熱が一週間も下がらないって連絡がきたんだ。それまではただのインフルエンザだろうって、病院からもらった薬を飲んでたみたいなんだけど、全然下がらないから不安になったみたいで。早く連絡すればいいのに、僕も兄も離れてるから遠慮していたらしい。他に親類はいないんだ」  生田はそこでまたビールを飲んだ。飲み干したようで、テーブルに置いた時には軽そうな音がカツンと鳴った。 「僕も兄も大学から県外でそのまま就職してしまったから、いつかは戻らなきゃいけないなって思ってたんだ。仕事を休んでこっちに戻ってきて、母親に精密検査を受けさせたら病名がわかったから、それじゃあもう、仕事は辞めてしまおうと思って」
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