二つに一つ

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 久世は目覚めたとき、一瞬まだ夢の中だと思ったほど、現在の状況を忘れていた。  すぐに記憶を手繰り寄せ、生田の実家のこたつで寝落ちてしまったことを思い出した。  身体が痛いし異様に喉が渇く。  ふらふらと起き上がり、コップを借りて水道水を立て続けに2杯飲んだ。  振り向くと、同様にこたつで寝ている生田の姿と、昨夜飲食したゴミが散乱している様子が目に留まった。  久世はそれを見ていたら我慢ができなくなり、キッチンの棚を漁ってゴミ袋を探し出すと、生田を起こさないようにと気を配りながらゴミを集め始めた。  スイッチの入った久世は、二日酔いの頭痛に耐えながらも、見えるところから順に片付けを始めた。  生田の実家なのだからとブレーキは踏みつつも、ここまではいいだろう、というところまで踏み込んで同時に雑巾で拭きながら整えていった。  最中、色々な物が目に入ってしまう。  母親のものとは思えないようなデザインのピアスと口紅、若い女性用の香水の染みたハンカチ、そして開封されているコンドームの箱である。  片付けなどしなければよかった、と後悔に襲われた久世はそこで座り込んだ。  この隣の部屋で生田が女性と、とそう考えると異様に生々しく感じられて気が遠くなりかけた。  もう止めよう、これ以上何も見つけたくない。
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