二つに一つ

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「醤油と、あ、醤油は料理用の大きいボトルのやつね、味噌と、味噌は白味噌。それから絹豆腐とネギ。ネギは普通のネギだよ。豆腐は絹だからね。木綿じゃないから。あと適当に飲み物。あ、帰り道にコンビニで僕の煙草も買ってきて。マルボロメンソール」 「……少し待て」  早口でリストを述べた生田に対し、久世は追いつくようにと急いでスマホに入力している。  生田は再び暗唱した。久世は丁寧にそれを繰り返してしっかりと確認をすると、背を丸めて玄関を出て行った。  45分後、買い物袋を二つ抱えた久世が帰ってきた。  その姿を見た生田は大笑いした。 「そのスーツ着てネギがはみ出したスーパーの袋持ってるのヤバ!」  生田の笑いは止まらず、久世は顔を赤くしてそれに耐えていた。 「しかも議員の孫があの距離を醤油とペットボトル持って歩いて……」 「……煙草はこれでいいか?」 「その姿で煙草買ったの?」  生田は再び大笑いした。  涙を浮かべながら笑い続ける生田を尻目に、久世は買ってきた食材をダイニングテーブルに並べ始めた。  いかにも美味そうな匂いが立ち込める中、それからさらに15分ほど待っていると、生田がこたつに料理を運び始めた。  久世はそれを見て慌てて手伝い始める。
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