二つに一つ

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 炊きたての白ご飯に焼き鮭、わかめと豆腐の味噌汁にかぶときゅうりの漬物、ほうれん草のお浸しにひじきの煮物、そして出汁巻き卵だった。  皿はありあわせで種類もバラバラ、盛り付けもただ乗せただけのあり様で全体的に見た目は素朴だが、ここまでの料理をたった1時間で作ってしまった生田の手際の良さに、久世は感心した。 「いただきます」  深々と頭を下げたあと、久世は食べ始めた。 「舌の肥えた透に食べてもらうのは気が引けるけど、そんなに悪くないでしょう」  生田は久世の反応を伺って不安そうな表情を見せた。  久世はあまりの美味しさに驚き、あれもこれもと箸が止まらず、生田の表情を見ている余裕がない。 「美味い! こんな美味いもの食べたことない」  そう言ってまたパクパクと食べ始めた。  生田は顔をほころばせ、次々と料理が消えていく様を嬉しそうに眺めた。 「料理は僕の担当だったんだ。母親が働いていたからね。掃除は兄の担当だったから、僕は苦手で……」 「美味かった。こんなに美味いもの作れるなんて天才だ。凄いよ雅紀! ありがとう。ごちそうさまでした」  久世はそう言いながら両手を合わせて再び頭を下げた。  するとすぐに立ち上がり、生田の皿も一緒にシンクへと運び始めた。そして、干してあった食器類や調理道具を拭き上げてテーブルに乗せたあとに、洗い物を始めた。
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