二つに一つ

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 それを驚きの目で眺めていた生田は、ハッと気がついたように立ち上がると、ダイニングテーブルの上に置かれた食器類を棚にしまい始めた。 「なんか新婚夫婦みたいじゃない? こういうの良いね。一人が料理して、もう一人が後片付けする。あ、でも使用人がいるような透には関係ないことか」 「いや、自分のことはなるべく自分でするようにと躾られたから、その、料理と洗濯以外はやる。洗濯は……クリーニングだから」 「ああ、なるほど。でもそれは凄いね。やらなくてもいいだろうに」 「祖父の父が元々成り上がった人だから。厳しい人だったらしい。そんことよりも、今のは既に昼食と言っていい時間だ。お母さんのところへ行くのは何時頃なんだ?」 「ああ、2時だよ。買い物があるからそろそろ準備しなきゃ」  洗い物を終えてシンクを綺麗に拭き上げた久世は、そのままの姿勢で何やら考えこんでいた。 「俺に何かーー」 「透はここで待っーー」  久世と生田は声が被ったことで途中で言葉を切った。  お互いに気恥ずかしそうな顔を浮かべたあと、生田が先に口を開いた。 「透はここで待ってる? それとも一緒に行って車で待つ? さすがにいきなり連れて行くわけにはいかないから」 「ああ、……いいのか?」 「もちろん。せっかく来たんだから好きなだけいていいよ」 「……ありがとう」  久世はただ心配だからと勢いだけで来てしまったが、ただ迷惑をかけているだけで、何の力にもなれていないことに焦っていた。  何かをしてあげたい、何か自分がここへ来た意味が見出だせないものかと苦慮していた。
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