来客

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「え? 誰? あっ! そう。そうなんだ。友達がわざわざ来てくれて」 「そう。めっちゃイケメン」 「えっ、うん」 「紹介してよ」 「いやーー……」  その時いきなり襖が開いたので、聞き耳を立てていた久世は慌てて素知らぬ振りをした。  女性が部屋から出てきて久世の真正面へ回り込むと、こたつの前の座布団に腰を下ろした。 「こんちには。木ノ瀬みどりと言います」  微笑を浮かべてそう言った。 「ちょっと、みどり!」  生田も続いて部屋へ来てこたつに座る。二人とは垂直にあたる場所である。 「……久世透です」  久世はチラッと目を合わせるとすぐに下を向いた。 「久世さんはどちらからいらっしゃったんですか?」 「東京です」 「へー。あ! あの幼馴染って人?」  みどりが生田に聞いた。 「いや、違う。てかみどり、これから病院に行くから」 「あ、ごめん。わかった。ていうか送ってよ」 「そうだね、ごめん。すぐ準備する」  そう言うと生田は慌てて隣の部屋へと戻った。  みどりは久世の方へ向き直り、にっこりと大きな笑顔を向けた。  久世はチラチラと生田とみどりのやり取りを見ていたが、みどりと目が合うと慌てて逸らした。
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