来客

3/13
前へ
/138ページ
次へ
 みどりは立ち上がって、探し物をするかのように部屋の中を見渡し始めた。 「ねー、雅紀ー、私のリップ知らない? あとハンカチも」 「知らない! そこらへんにあるんじゃない?」  隣の部屋から生田が大声で答えた。  膝をついてあちこちと探すみどりを見かねた久世は、おもむろに立ち上がった。  テレビ台の隣にあるローチェストの上に、先程探し出したそれらを置いておいたのだ。  それを手に取ってみどりの方へ差し出す。ここまで無言である。 「あっ、これです。ありがとうございます」  みどりは久世の手からそれらを受け取って笑顔を向けた。 「……落ちていました」  それだけ言うと、久世は元の場所へ戻った。 「おまたせ。行こう! あ、あった?」 「久世さんが見つけてくれたみたい」  生田はその言葉を聞いて、みどりから久世へ視線を向けた。  久世は俯いてスマホを操作している振りをしている。 「透、ありがとう。それじゃあ、行こう。透はどうする?」 「……行く」  三人は部屋を出た。
/138ページ

最初のコメントを投稿しよう!

444人が本棚に入れています
本棚に追加