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昨夜一緒にいた女性はみどりなのだろう。彼女の言葉や車を返しに来たことからも間違いない。
どれくらいの付き合いなのか、結婚するのか、こちらへ戻って彼女と家庭を持つのか、子供も作るのだろうか、今時は2人くらいだろうか、1人もあり得る。マイホームも建てるかもしれない。お母さんが完治したら孫と息子夫婦と同居になるのだろうか……。
久世は、生田とみどりの未来予想図を描くのに夢中で、生田が戻って来たことに気が付かなかった。
「おーい、透くーん」
その声で我に返ると、生田が運転席からこちらへ体を向けて手を振っている姿が目に入った。
「こっちに乗りなよ」
生田が助手席を指さしたので、久世はそちらへ移動した。
「薬を変えたんだ。強い薬だから心配だったんだけど、効いているみたいで元気だった」
生田は車を発進させながら笑顔でそう言った。
「良かった。それで治りそうなのか?」
「うーん、どうだろう? 退院の話は出ていないけど、薬のお影で状態はいいみたいだから、思ったよりも早いかもしれない」
赤信号で停まったとき、生田は久世の方を向いて笑顔になった。
その笑顔。
生田のその笑顔が大好きなのだ。
その笑顔が曇るところは見たくない。
久世は、生田の母の容態が軽快に向かっていることに心の底から安堵した。
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