来客

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 掃除をしながら美味そうな匂いに鼻孔を刺激された久世はラストスパートをかけた。生田の料理が完成する頃にはすっかり片付き、隅々磨き上げられた部屋は見違えるような状態になっていた。  二人は生田の自信作に舌鼓を打ちながら、感謝の言葉を繰り返し、互いに互いの能力を褒め合って和気あいあいと食事を済ませた。  二人でコーヒーを飲みながら一息ついていると、玄関が開く音がした。 「雅紀いるか? ……え!? ここどこだよ」 「兄さん! 早かったね。迎えに行かなくてごめん」 「ここ俺の家? 驚いたな」  兄の反応に生田は微笑んだ。 「どうやって来たの? タクシー?」 「いや、空港からバスに乗って駅前に行ったらちょうど村上さんがいてさ。帰るって言うから同乗させてもらった」 「あぁ、102号室の? それは偶然」 「それより凄いなこれ。あ、友達?」  兄はようやく久世の存在に気がついた。  久世は立ち上がっていて、その言葉で頭を下げた。 「久世透。心配してきてくれたんだ。こちらは兄の宏紀(ひろき)」  生田が紹介した。 「久世です。お邪魔しています」 「わざわざ? こりゃどうも。ありがとう」  宏紀は生田そっくりの笑顔を見せた。 「いやー、これは凄い。一瞬自分()だとは思わなかった。今度の彼女は離さないほうがいいよ、絶対」
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