三度の奇遇

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 20分程のドライブの後、東京駅のロータリーに到着した。  生田は降車する前に久世に小説を手渡した。 「僕はもう読んでしまいましたので、もしよろしければ読んでみてください。新品ではありませんが、購入するのを忘れてしまっておりましたから」 「いえ、そんな、悪いですよ」 「では、試し読みということでお貸しします。ご興味を抱かれないかもしれないのに購入するのはもったいないです。次にお会いする機会にお返しいただければ結構です」  生田は笑顔でそう言った。  久世はおずおずとその手から本を受け取った。 「ありがとうございます。必ずお返しします」 「2ヶ月後にお時間が合いましたらまたお茶でもいたしましょう。いただいた連絡先にご連絡いたします」  生田の再会の約束に、久世は感激した様子を見せた。 「わかりました。その時までには読み終えて、感想をお伝えできればと思います」  二人はそこで別れた。
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