来客

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 さすが生田の兄というべきか。そんな考え方があるとは思いも寄らなかった。これまでの人生で宏紀のような視点で物事を見ている人に出会ったことはなかった。  教師も同級生も家族でさえ結果至上主義の人ばかりで、行動に意味がなければならないとする世界で生きていた。  恋愛も、ただ相手を好きだからではダメだと考えて、必死に相手を喜ばせようと努力してきた。  これまで惚れた相手の中で生田は特別な存在だった。生田のことを想うと頭で考えるよりも行動が先に出てしまう。  今回もそれで思わずここまで来てしまったが、自分の来た必要性を示さなければと焦っていた。  しかし、ただ来てくれただけでいいと言ってもらえた。  生田自身の言葉ではないが、共に育った兄の言葉はそれに近いほどの重みがあると思える。  久世はようやく肩の荷が下りたように、ホッと安堵した。
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