元カノがいるなら元カレもいる

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元カノがいるなら元カレもいる

 生田と久世は宏紀に見送られてタクシーで青森空港へと向かった。  一緒に帰るとは言ってもここでお別れである。  久世はチケットカウンターを前にしてどうするべきかを決めかねて焦っていた。  生田と同じ飛行機に乗って自宅まで見送ろうか。しかし友人としては不自然だ。理由がない。どう説明すれば不審に思われず同じ飛行機に乗れるだろうか。いや、無理だ。どう考えてもおかしい。ここは諦めるしか…… 「透、どうした?」  眉間に皺を寄せて考え込んでいる様子の久世を案じて生田は声をかけた。 「……なんでもない」 「そう? あ、チケット買った。僕の方が早いみたいだ。透は? チケット買った?」  そう生田が言ったとき、久世は聞き覚えのある声を突然耳にした。 「あれ? 透か? まさか!」  声のする方へ振り向くと、高校の時からの知人だった。五人ほどの友人らしき同年代の男女と共にチケットカウンターから少し離れた場所に立っている。 「何してる? こんなとこで会うかぁ?」  目を合わせたのに返事もせず、慌てた素振りで俯いた久世を見たその男性は、友人の輪の中から出てこちらへ向かってきた。
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