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開け放たれた赤城の奥から、比玄がそろそろと窓辺に歩んだ。ラフリンは身体の自由を奪われ、庭に正座した状態で、背後の男によって顔を上げさせられた。
比玄は細目を吊り上げ、唇をわななかせる。
「貴様は我が兵に多大な損害をもたらしただけでなくっ、あ、あろうことかインフィンを」
インフィンと繋がったことが、バレたらしい。
「比玄様が寵愛する男を、無理矢理犯しました」
ラフリンは開き直って言った。周囲を囲む兵や官僚、侍中らがギョッと息を飲むのが分かった。
「恐れながら比玄様の陰茎では、イイところには届かないだろうと」
比玄の眉間に亀裂が入った。
「我が血肉を注ぎ込みました」
挑発するように笑う。殺すだけでは納得しないような怒りを与える。そう簡単に殺されては困る。だから挑発し、生命を引き伸ばす。
「こ、この汚れた男をっ……粗蛇の蔵に放り込め!」
比玄はラフリンを指差しながら、甲高く叫んだ。
「おのれ忌々しい! 死を乞うほどの苦痛を味わうが良いわ!」
背後の男に抱えられ、ラフリンは粗蛇の蔵へと連れられた。暗い、湿気の多い蔵の真ん中で、後ろ手を柱に括り付けられる。身を覆うものはない。
「気でも……狂いましたか」
ソピンが言った。声を聞くまでソピンと分からなかった。
「あんなこと言って……こんな場所にっ……」
ソピンは命令に忠実に、粗蛇の入った壺を開けた。粗蛇は床を這いながら、ラフリンのそこを一途に目指す。
「だが、おかげで生き延びることができた」
「こんな辱めを受けてまでっ……生き延びたいと言うのですかっ!」
ソピンは「情けない人だ」と付け足した。
「こんなもの、苦でもなんでもない」
粗蛇の舌がラフリンの肛門を突いた。
「くっ……」
こじ開けられ、引き裂かれるような痛みに身が跳ねる。粗蛇はラフリンの中を舐めまわし、グングンと欲深く侵攻する。決して快楽に変換されることのない不快感と、身が破壊されるような恐怖。それとこの恐怖がまだ序の口であると知る身体が、カタカタと震え出す。
「座貫の男ならっ、潔く死ぬべきではないのですかっ!」
粗蛇が中で進路を変えた。ラフリンは痛みにのけ反った。ソピンは冷ややかにラフリンを見下ろし、怒りに肩を震わせていた。
「僕はあなたに憧れていたのにっ……本気で尊敬していたのにっ……」
まさか慰み役だったなんて。
ラフリンは粗蛇に揺さぶられながら、ソピンが言わんとしていることを読み取った。
「ひっ……うあっ」
また進路を変えた。
声と一緒に、物理的に這い上がった胃液が顎を伝って胸元に垂れた。胃液の進路を目で追うと、股の間から半身を揺らす粗蛇が見えた。その頭部は自分の中にすっぽりと収まっている。
「はっ……うぐ」
ソピンの陰茎が口に詰め込まれた。
「そんなに生き延びたいのなら、どんな恥辱にも耐えられるでしょう」
押し込まれた怒りの肉欲を、ラフリンは粗蛇の不快感を紛らわそうと丁寧に愛撫した。汗っぽくて尿臭い。インフィンの白色とは対照的な深い褐色で、喉まで詰めてもまだ半分しか入っていない。
「さあ、全部受け入れてください。こうされるのは慣れているでしょう」
ソピンの手がラフリンの頭を掴んで、喉の限界を突いた。
「ぐっ……」
苦しい。粗蛇が腹の中で進路を変え、喉に押し込まれたものは容赦無く上顎を擦り上げる。
「ふっ……ごっ……」
「粗蛇、全て入りましたね」
ソピンは言って、ラフリンの鍛え上げられた腹をさわさわと撫でた。
陰茎をラフリンの口から引き抜く。
「んはっ……あ……蜜を」
「蜜などいりません。僕が抜いて差し上げます」
ソピンはニヤリと笑い、粗蛇の尻尾を掴んだ。
「やっ……ひっ」
拳ほど、粗蛇を引き出す。ラフリンは活きのいい魚のように身を反らして、放尿した。下半身が自分のもので温かくなる。ずっと我慢していたからか、水分を取ってなかったからか、尿は色も臭いも濃い。一気に顔が熱くなる。
「アンタを尊敬していたのが……馬鹿みたいだ」
ソピンは再び拳ほどを引き出した。その手はさっきよりも乱暴で、ラフリンの目からボロボロと涙が溢れる。
「少し、ず……つっ、んああっ……やっ……」
「少しずつ? それってこのくらいですか?」
「うっ、ああっ」
ずるずると粗蛇が引き抜かれる。腹を撫でられ、たわむれに乳首をキュッとつねられ、あられもない声が口から漏れた。叱咤するように頬をパチンと叩かれる。
「みっともない声をあげないでください」
粗蛇が抜ける頃には、ラフリンは息も絶え絶えになっていた。
ラフリンは柱に繋がれたまま、汗に塗れた体をソピンによって持ち上げられた。
粗蛇の形にポッカリと開いたラフリンのそこへ、ソピンの肉塊が押し当てられる。ずん、と突き上げられ、ラフリンはわけがわからないまま射精した。
「ああっ……」
ソピンが乱暴に腰を振る。硬い柱に背中が擦れ、皮膚がめくれた。
「死んだ方がっ……マシではないですかっ」
「はっ……あっ、あっ……やっ」
「こんな風に犯されてっ……辛くないんですかっ! 恥ずかしくないんですかっ! いっそ、いっそっ」
「ひっ……んあっ……」
ガツガツと腰を打ちつけながら、ソピンは苦しげに言った。苦しみを与えられているのは自分の方なのに、その表情で胸が痛い。ソピンが自分を慕っていたことは知っている。麾下もそうだ。みんな俺を信頼して、厳しい調練にも耐えてくれた。それを死なせてしまった。
「死んでくれた方が僕だって……僕はっ……アンタに憧れていたのに!」
ソピンのものが硬さを失った。引き抜かれ、ラフリンは容赦無く床に落とされた。背中は擦り剥けて流血し、ソピンを受け入れていた肛門は赤く腫れ上がっている。
「アンタは明日、四肢と陰茎を切断される」
物騒な発言に、ラフリンは狼狽えた。
「だるまにされて、兵舎に放り込まれるんです。だるまになったアンタを抱く奴がいるかは疑問ですけど、アンタは死よりも辛い目に遭うんだ」
ゾッとした。死ぬのが嫌で、比玄を挑発するようなことを言った。でもそんな体で生きながらえることに意味などない。
「いや……だ」
「僕もっ……アンタのそんな姿は見たくないっ!」
ソピンはラフリンの側にしゃがんで、懇願するように言った。
「僕はっ……これ以上アンタに落胆したくないっ……これ以上アンタの醜い姿を見たくないっ! だからどうか、どうか、潔く、座貫の男なら……っ」
ソピンの目からも、涙が溢れた。
「死んでくれ……と?」
「ラフリン殿にとっても……その方が良いかと」
まだ、敬意が残っているのが分かった。だがその残り火は、自分の決断一つで消える。
「俺は……死にたくない」
「……っ!」
カッと怒りに見開かれたソピンの目を、ジッと見つめ返す。
「俺は生きる。俺の麾下……精鋭部隊を失った座貫がどうなるかを見届ける……だるまになっ……ても」
言いながら、四肢のない自分の姿を想像して、言葉が途切れた。身体が痙攣する。本当に自分の意思で死ねなくなる前に、死んだ方がマシではないか。
床を這う粗蛇が、再びラフリンの肛門を押し広げた。中に入ってくる。
「ひっ……」
もう嫌だ。死にたい。死んで楽になりたい。けれど弱音を吐いたら、真に受けたソピンに殺されるだろうから、口にはしない。
粗蛇が奥へ奥へと入ってくる。ラフリンは身悶え、首を振った。毛先から汗が飛ぶ。毛穴という毛穴から汗が噴き出した。
蛇は嫌だ、というインフィンの声が、胸によぎった。
「ソピ、ン……」
粗蛇が進路を変え、ラフリンは喘いだ。息を切らしながら、ソピンに訴える。
「インフィ……ンに」
粗蛇の侵攻で腹が重い。小さな、消えてしまいそうな声で、ラフリンは続けた。
「そ、そじゃをっ……つ、かわっ」
インフィンの泣き顔ばかりが頭に浮かんだ。あの情けない男は、きっと粗蛇の侵攻に耐えられない。可哀想だ。以前なら絶対に湧くことのなかったぬるい感情が、インフィンを思うと溢れてしまう。
「あっ……ひっ」
口を開くが、まともに発音できない。
「ふっ……ああっ」
ソピンが粗蛇を引き抜いて、ラフリンに先を促した。
「インフィンにはっ……粗蛇を、使わないでくれ……」
ソピンの瞳が揺れた。
「……インフィンは、きっと泣いてしまうから」
ソピンはしばらく沈黙した後、小さく「はい」とだけ言って出て行った。
粗蛇は再びラフリンの肛門に押し入ると、空になった中をグングンと突き進んで、あっという間に腸を満たした。ラフリンの意識は、粗蛇の息の根と共に途絶えた。
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