早く生きるのをやめた日

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早く生きるのをやめた日

 これから読んでいただくお話は、地球の日本とよく似た自然や、地域の名称のついた小さな惑星のお話です。  この惑星では地球と同じように人的生命体が自分たちが一番の知的生命体だと思って生活している。  平均寿命は150年。地球の女性に当たるフィルは18歳から90歳まで子供が産めるのだが、全てが自給自足のあまり大きくはない惑星なので子供の数は自然限られている。  生殖の方法も地球の人的生命体と同じ形で愛し合う。  子供を産める年月が長いとので、あまり焦って子供を産む必要もないが、そこはやはり地球人とは似て異なものなのだ。  生殖については、後々具体的な例をあげながら時々解説を挟むことにしよう。    愛し合うのがとても好きなこの惑星の人的生命体だが、自給自足の狭い惑星なので、避妊をすることも必要だ。  この惑星には良い避妊薬があるのでフィルが飲み忘れなければどれだけ愛し合っても子供はできない。フィルは思わぬ妊娠をしないように子供が産める年齢になると避妊薬を飲み始める。  他の避妊法としては地球では男性にあたるメールに避妊具を装着してもらい、直接精が交わらないようにしてもらう。フィルの身体が弱かったり、避妊薬を飲み忘れたしてしまう場合はメールが責任をもって、避妊をしなければいけない。  メールの方が生殖器の完成が遅く、性に関心はあっても、子供を作れるようになるのは早くても25歳からなのでメールが年上の夫婦が多い。  このお話の主人公、惑星の中でも屈指の財閥である綾小路紗希(あやのこうじさき)の父親、綾小路(まさる)の場合はとても早く生殖器が完成したので、大学を卒業すると同時に早めに家の跡継ぎが欲しいと考え、同じ大学だった同級生の紗代と就学中に結婚を決め、愛し合い精を注ぎあった。  そして卒業と同時に一旦避妊をやめ、子供を作り始めたのだった。  メールは生殖器の発達が遅いとはいえ、子供のころから長く関心を持つ性の世界に、生殖ができるようになるとどっぷりとはまり、夫婦はほとんど毎晩濃厚に愛し合うのがこの惑星の人的生命体だった。  この惑星では、一度結婚したら、その他の相手と愛を交わしあってても、快感を感じられない。  子供のできた夫婦は一度結婚したら別れることなく生涯一緒にいることが多かった。  他の異性には目が向かなくなる。という方が正しいのであろうか。  なので、不順異性交遊とは無縁の惑星なのだ。と、紗希は教えられていた。    そう言った体質の生命体なので、子供不足にならないためなのか、メール同士でも愛し合えばどちらかの生殖器がが変化して子供ができたし、フィル同士でも同じことが起きるのだった。  この惑星ではフィルが生まれると10cm程の小さな妖精が空からやってきていつでも小さなフィルの話し相手になってくれる。  そして、メールには生まれたときには10cm程の小さな執事がお腹の中からついてくる。生まれてくるメールのへその緒にしっかり捕まって一緒に出てくる。  生まれてから死ぬまで、フィルの妖精のようにずっと(あるじ)と共に行動するのだった。 **********    綾小路 紗希(あやのこうじ さき)は会社ではいつもいつも仕事を押し付けられて、自分だけが残業をさせられていることに気付いていないわけではなかった。  お付きの小さな妖精のサキがいつも紗希にそう囁いていたのだから。  サキは長い金髪をして薄青色の透明な羽をもつ可愛い顔立ちの妖精だった。  (あるじ)である紗希は生まれたときから切っていない長いストレートの黒髪をアップにして仕事にふさわしい髪型にしていた。  目鼻立ちはまるで日本人形のようで大したお化粧もしていないのに透き通るような肌に、まつ毛の長い黒目がちな大きな眼と、形の良い小鼻の下には生まれつき赤い小さな唇を持っていた。  要領の良い同期の柴田 鈴江(しばた すずえ)丸山 美代子(まるやま みよこ)は入社したときから二人、仲が良かった。同じ大学を出たのだそうだ。  秘書課に配属されるくらいなので二人ともそれなりに美しくはあったが、心根はそうはいかなかったようだ。  もちろん、彼女たちにも小さな妖精が一緒にいた。二人共茶色い肩くらいの髪の毛と黄色い羽をもつ、ちょっと鼻が上を向いた妖精だった。  主の心根の美しさは妖精に現れるようだ。妖精の髪の色や羽の色は主の行動によって変わっていくからだ。  ついている妖精の羽が透明なほど、心根が綺麗だと言われている。  3人入社した同期の新入社員の中で秘書課に配属された3人だったが、一人だけ別の大学から入ってきた紗希に、鈴江と美代子は冷たかった。  女子しかいない部署で仲良し二人組に逆らうのは得策ではなかったので、紗希は仕方なく仕事を押し付けられてもおとなしく言う事を聞いていた。  妖精は主と同じ名前でカタカナで呼ばれる。  ついているフィルが大人になってもずっと一緒だ。妖精も自分の主と一緒に段々と年を取って、主が死ぬときには空に消えていなくなる。  妖精の国に帰るのだと言われている。  サキはいつも紗希に 「ちゃんと言いなさいよ。他の人はお仕事してませんって。」  と、囁くのだが、紗希は小さく首を振ってサキに笑いかけるのだった。  昼間、重役たちの秘書として働く時間は勿論みんなで協力してこなしていくが、重役たちがいない間の雑務やPC管理などは全て紗希が押し付けられていた。  勿論、家の顔の利く会社なので、重役に真実を告げれば紗希の問題は解決するかもしれないが、もっと面倒な問題が勃発することは目に見えていたので、あえて告げ口などはしなかった。  何よりも本人達より妖精のスズエやミヨコは主よりも意地が悪く、サキもよく長い金髪を引っ張られたりして虐められていたのだ。これ以上妖精同士の争いも見たくなかった。  綾小路家はもとより、1000年続く由緒正しい家であったので、そこに嫁に来た母の紗代は最初に女の子を産んで、少々がっかりされてしまった。  夫の将には、「こんなに愛し合っているのに。」と、その後なかなか妊娠できない紗代に愚痴を言うので、それ以上の文句を夫から言われないように紗希にはとても厳しく躾をした。  ただ、紗希を産んだのは紗代がまだ25歳の時で90歳まで子供が産めるこの惑星のフィルなので望みは捨てていなかった。  紗代についている妖精は紗代によく似た長い黒髪の可愛いよりは美しいという顔立ちの妖精だった。  サキと同じようにサヨも薄青い透明の羽をもっていた。  紗代が見ていない所でもサヨは紗希を見張って、紗希はいつも気が抜けなかった。  紗代の実家は古くからの農家で今住んでいるロホンギーからは自動車でも4時間ほどかかる。  お稽古ごとに忙しい紗希は殆ど母方の祖父母の顔を見たことがなかった。    紗希が18歳になった頃、紗代は43歳でようやく次の妊娠をしてメールを産んだので、紗代や将からの紗希への興味はすっかり薄れたが、紗希はすっかり母の教えが身についていた。  年の離れた弟は父の(まさる)から漢字を貰い将一(しょういち)と名付けられた。    跡取りが多いと、後継ぎ問題が起きるので、綾小路家ではしばらくは妊娠を控えようと夫婦で話し合った。    さて、親に言われた事には逆らわない紗希は小さい頃から言われたことは手早く終わらせる。迅速に、正確に。お稽古事もきちんとこなす。  バレエ・ピアノ・お習字・お琴・日舞にお料理まで。先生に言われたことは全てきちんと迅速に覚えて正確にこなした。  常に、迅速に、正確にという事を求められて育ってきた紗希にはあまり難しいことでもなかった。  おかげで大学生になる頃には、 「お宅のお嬢様は何をしてもそつなくこなして、それも、お間違いなく正確でいらっしゃる。お綺麗にお育ちになられて、本当に素晴らしいですわ。いつお嫁さんに行かれても安心ですわね。」  と、いつも褒められることになった。  紗希自身はまったく得をしているとは思わず、これらの賛辞は母の紗代が満足するための道具でしかなかった。  紗代は大学に進学するために都会に出てきたが、田舎の農家の出身と言う事を少し恥じている様子で、何事も都会的な習い事を紗希にさせるのだった。  紗希は大学を卒業して、綾小路家の顔の利く会社に勤めはした。  仕事はいつものように迅速に正確にそつなくこなしてはいるので評判は良かったが紗希自身はさっぱり楽しくはなかった。  持って生まれた美貌なので、男性(メール)からの誘いも多かった紗希だが、小さい頃から厳格に育てられていたのと、ずっと女子だけの学校だったので声をかけられても対応の仕方が分からなかった。    そんなことが何度かあると男性社員の間では 「お嬢様はお高くとまっていてつまんないな。もしかしたらお嬢様だから夜の生活をしないのではないか?」  と、うわさが流れ、愛し合う事の好きなこの惑星のメールは、やがて誰も声をかけてこなくなった。  特に、ようやく生殖ができるようになる時期を迎える大学を卒業した後の25歳になった男性たちからは、本当に舐めまわされるように見つめられるので、紗希は身の置き所がなかった。  母の紗代は躾にも厳しかったが、結婚も自分と同じように早い方が良いと、紗希が子供を産める年齢になると、学生のうちから生殖年齢を迎えたメールとのお見合いを何度もセッティングしたが、紗希自身はまったく相手に対して性欲というものが湧かなくて、全てお断りしていた。    秘書の仕事をしているうちに紗希はなんだか、これまでの自分の人生が酷くつまらなかったものなのでは?と思うようになった。  なんでも正確に早くこなす。もちろん、これさえできれば皆に褒められはするし、間違いもないので叱られることもない。  でも、仕事を押し付けられても要領よくこなすので大した残業にはならずに、他の二人の同期の秘書がさぼっているのは、上司は誰も気づかないのだ。 『私の人生、これで良いのかしら?家は弟が継ぐでしょうし、まぁ、まだ5歳だけれど。年の割にはしっかりした執事がついているし。両親も私にはすっかり興味を失っているし。私は男性に興味がないし。かといって、女性に興味があるわけでもないし。どこかおかしいのかしら?』  紗希は大学を卒業した後、会社に3年勤めて25歳になった頃からは、家からの 「そろそろ結婚しなさい。」  攻撃に辟易していた。  何度か見合いもさせられたが、どの男性もなんだかのっぺりした顔に見えて、肩書は立派だが、その人自体に興味を持てるような人は誰もいなかった。  この惑星の人的生命体はフィルがメールと結婚したいと思うのは、気持ちの問題よりも身体が反応するはずなのに、紗希の身体は誰にも反応しなかったのだ。 『もしかして、お相手からも私って同じように見えるのではないかしら?』  紗希はそんな風に思った。  お稽古事は沢山したけれど、面白いと思えたものはお料理くらいで、他のいわゆるお嬢様的なお稽古事にはあまり興味を持てなかった。  茶道に華道、惑星舞踊、ピアノにヴァイオリン等、多数のお稽古事をしたが、一通りの師範までのお免状を貰った後は足が遠のいていた。  会社に勤めて5年がたった27歳の頃、同期だった二人はとっくに会社の男性と結婚を決めて、退職して子供を育てていた。  紗希は秘書課にいるには年齢が高くなりすぎたが、会社としては綾小路家のお嬢様を秘書課以外の部署に回すのはどうにも都合が悪いらしく、新人の研修係に回されて、表に出ることもなくなった。  雑務を押し付けられている間も楽しくはなかったが、自分が所謂『お局』様になってしまったのはお嬢様の紗希でもよくわかっていた。  別の部署では30歳を越えても活躍している女性がいることも知っていたが、きっと自分は総合職などには回してもらえないのだろうと言う事も、会社が紗希の扱いに困っていることも十分にわかっていた。  上司が昼休みに話しているのが聞こえてしまったのだ。 「綾小路さんもねぇ。美人だし、まだ表に出てもらってもいいんだけど、やっぱりお肌の透明感なんかも若い子にはかなわないしねぇ。  秘書課以外でもあの頭の良さだったら勤まるだろうけど、今更異動ってのもねぇ。そろそろ結婚でもしてくれないかねぇ。」  そろそろ、親の言う通り、適当な男性を選んで身を固めた方がいいのかしら。とも考え始めた時にそのような言葉を耳にしてしまった。 『だって、私まだキュンもジュンも感じたことがないのだもの。しかたないわ。 でも、上司も自分と同じように思っているのね。』  紗希は会社にもそろそろ居づらくなってしまった。と、自分の身の振り方を考え始めた頃だった。  家にいる時に父である将からもっとあからさまな言葉を投げつけられた。  父の将はこれまでも綾小路家の長子であるにもかかわらず、フィルである紗希にはあまり興味を示さなかったが、弟の将一が生まれて、いよいよ来年は小学校というこの頃は紗希に更に冷たくなってきた。 「色々と習い事もさせてやったんだ。そろそろ結婚して家を出てくれ。  将一を一人っ子のようにのびのびと育ててやりたいんでね。」  まったくもって不本意だ。  これまでだって、将は将一しか遊びに連れて行ったことはない。  紗希の時には父親参観だって、学校の他の行事だって一度も来てくれたことはないのに、将一の幼稚園の運動会など率先して行っているし、幼稚園にも寄付をして将一を特別扱いしてもらっている様子だ。  それに紗希とは18歳も年が離れているのだ。もう一人っ子のようなものだろうに。  紗希は、父の言葉を聞いて会社を辞めることにした。急にそこまで言ってくると言う事は、少なからず会社からの小さな苦情も父の元に来ているのだろう。  もう、別に両親の庇護下に居なくても生活はできる。  何をするにも早く正確に。と追い回され、自分を追い詰めていたた日々から解放されたかった。  そうでもしないと、自分が何者なのかがよくわからなくなっていたのだった。  両親に 「会社を辞めます。」  と、告げると将に 「結婚相手が見つかったのか」  と聞かれた。 「結婚はお相手が見つかれば勿論しますけれど、お見合いでは見つかりませんでした。  とりあえず一人暮らしをするので家も出ます。」  というと、 「家を出るのだったら好きにするがいい。  ただ、綾小路の名前を汚すようなことだけはするな。  住むところは・・・そうだな。我が家の名義のマンションを一つやろう。  東京の郊外にあるタンマニュータウンにあるマンションだ。  ロホンギーのこの辺りとはまた違う緑が楽しめるぞ。  マンション名はAYANOⅢ。  全部で20世帯のファミリータイプと単身者用が混ざったマンションだ。  名義もお前の物にしてやるから生前贈与だと思って受け取れ。  綾小路家の残りの財産は全て将一に渡す。それでいいな。  マンションの一部屋に住んで自分で管理をすれば生活もしていかれるだろう。  せっかく色々な師範の免状を持っているんだから部屋が空いていれば何かの教室をしたっていいんじゃないか?  もし、子供を作る気になる相手がいれば、ファミリータイプに引っ越せばいいことだからな。」  父親はまるで紗希が家を出ると言うのを待っていたかのように、用意周到に紗希の住む場所まで決めていた。そして、財産分与の話まで一気にされてしまった。  綾小路家はロホンギーの一等地に古くからある一戸建ての家だった。  勿論、世代が変わる毎にリフォームをして快適な生活が送れるようになっている。ただ、外装は家を建てた曽祖父の威光を残すようにあまり手を加えずに、補修工事をしていた。  紗希は 『私の扱いは、弟が生まれたときからもう分かっていたことだわ。  悲しくもないし。  そうか一人暮らしをしながらマンションの管理をするのかぁ。  でも、サキだってその方が気楽よね。いつもいつもサヨがみているからおなかが痛くなったりしていたものね。  他にお勤めを探すのも大変そうだし、すこしのんびりしてもいいわよね。』    そんな風に思って、親に甘えているかとは思ったが、存外簡単に父の話を受け入れることができた。  財産だって、そのマンションがあってうまく管理さえすれば一生一人でいたってかまわない。  それ以上の財産だっていらない。と思った。 「ありがとうございます。おとうさま。では、名義の変更などの手続きは会社を辞める前にお願いいたします。」 「なんだと?なるほど、会社に行っていたのは無駄でもなかったようだな。  少しは生きる術を知っているじゃないか。わかった。収入が途切れないように名義の変更は紗希の退職前にしてやろう。  ただマンションは人の出入りがあるからな。  空き室が多くなればお前の収入は減るし、満室だったら楽に生きられるだろう。  財産はこのマンションだけなんだからうまく経営するんだな。」 「わかりました。それで、そのマンションのお家賃は?今はおいくらですの?」 「マンション名はAYANOⅢ。ファミリータイプは10戸で広さが2つある。3LDKと4LDK。今は3LDKが100㎡15万。4LDK120㎡が20万。後は2DKと1LDKは80㎡位だな。  これは入居する住民の人数を考えたリフォームをする時に部屋数が違うだけで住むのは1人か多くて2人までだな。こちらは8万円だ。  リフォームなどをする業者も一緒に紹介する。  1階は庭付きで4室。5階建てだ。丁度一階の単身者向けの2DKが空いている。  お前はそこに住めばよいだろう。  ファミリータイプは庭付きも人気があるんだが、独身や二人だけで住む人は庭が煩わしいらしくてな。  1階に二部屋あるんだが空き室になっている事が多いんだ。庭も荒れているしな。隣のファミリータイプの住人から苦情が来るんだ。そういう管理もするのだから覚悟も必要だぞ。」 「はい。そのマンションの名義が私になった後はそれぞれのお部屋のお家賃は私が考えてもよろしいのですよね。」 「もちろんだ。だが、綾小路家が建てたマンションだ。外側の材質は良いし、騒音の問題がないように壁も床も防音にしてあるから、あまり安くしては逆に足元を見られるぞ。」 「わかりました。とにかく、私、会社を辞める前に、引っ越しだけは先にいたしますわね。名義の変更には時間が少々かかるでしょうし。  早めにこの家を出ることにいたしますわね。  その際のリフォームの料金は私の預金から出しますわ。名義が変わるまではお家賃も払わせてください。管理をする前に賃貸のお部屋で暮らす人の気持ちになってみたいんですの。」 「わかった。紗希、私は跡継ぎのメールを望んでいたのでお前には良い父親ではなかったと思っている。だが、お前が不幸になればよいなどとも思ってはいない。  結婚して幸せに暮らしてほしいとも思ったが、どうやらまだお前は何が幸せなのかを見付けられないようだな。  夜の生活の楽しさもまだ味わったことがないなんて、27歳にもなって少々不憫でもある。  マンションの管理をしながらじっくり自分を見付けたらいい。何か困れば相談にはのる。お前がこの家の娘と言う事には変わりはないからな。」  将は、なんだか物分かりの良い父親のようなことを言って、紗希が家を出る前の日には一応家族の中でのお別れ会をしてくれた。  将一はあまり関りの無かった姉が家を出ると言われてもピンとこない様子だった。まぁ、無理もない。次の4月でやっと1年生なんだから。  ともあれ、自分を嫌っていると思われた父親には思うほど嫌われてはおらず、ただフィルだったために興味がなかっただけなのだという情報の収穫を得られただけでも何となくうれしかった。        
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