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いますよねぇ…と何食わぬ顔で言った男が、ハンディファンを頭皮に当てるようにしながら歩いて行く後ろ姿がゆらりと揺れる。
「おいっ」
バシッ…と肩をキャッチされた感覚に、自分が揺れたのか…と思いながら、ハンディファンの男が1階の部屋に消えるのを見た。
「信じられない…普通に入っていった……」
「伍代さんの部屋は?」
ピースしたかったわけでは無いけど、すでに外部からの飛来攻撃を受けているという2階と口にするのも嫌だ。網戸に飛来……
ヤツのハネは3億年前の形のまま進化せずそのままだから飛び立つのも大変なはず。そのまま化石となってくれればいいものを、臭ければ臭いほど魅力的…と食品の臭いやメスのフェロモンに誘われ新顔のメンズが飛来したのではないだろうか。このあとは交尾と繁殖…シャレにならない悪循環だ…
「よく知ってるな」
「………この世で一番不要なものは、虫のフェロモンだと言い切れます…」
「興味深い」
「ダニ類もフェロモン求愛ですよ?目に見えない極小のクセに、何やってくれてんの?って感じですよね?」
ココロの声が漏れていたようなので、もう隠すこともないと吐き出す…
「社長」
「なに…?」
「やっぱり、私、仕事どころでないやんごとなき事情が出来ましたので、辞めさせていただきます」
「……やんごとなき事情とは?」
「ヤツの襲来による早急な引っ越し」
「辞めてもらっては困る。うちに引っ越せばいい。仕事部屋と別に、使ってもらえる部屋が二部屋ある」
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