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もう返す言葉がなかった。こんなにもヤツを語る日がこれまでにあっただろうか…疲労困憊でまた具合が悪くなりそうだ…
「お願いします…」
とは言えたと思う。思うけど、そこから再びこのマンションへ戻るまでの記憶はあやふやなものだった。
感覚としては、社長がとてもテキパキと“引っ越しバイト経験者?”というような手際の良さで荷物を車へ運んでくれたのだと思う。
引っ越しを繰り返す私は元々の荷物が少ない。もちろん段ボールはない。車に積み込むことの出来るプラケースをそのまま持って来た。
「車のシート…傷ついてませんか?」
駐車場で小さなキャリーバックを手にした私は、富永さんがコンシェルジュデスクで借りてきた台車へプラケースを乗せる二人に聞いた。安物の角張ったプラケースをレザーシートに直接乗せてたよね…しかも重ねて…
「問題ないよ」
「ヒロ、表に回る。彼女がエントランスから出入り出来るようにしないと」
「だな」
もうすっかりプライベートタイムの口調の二人だけど、富永さんは私がここへ越して来たことを不思議に思わないのかな?社長はちょくちょく女の子を泊めるタイプかも…今日明日にアパートを見つけるのは難しい。かといって、あそこで眠れないからネカフェ民になるにもお金が必要…
1週間位はここにおいてもらえるとありがたい…その間にマンスリーマンションの契約でもしよう。
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