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「富永さんもここに住んでおられるんですか?」
社長の部屋を案内してもらうと、そう聞きたくなるような広さだった。
「いや、よく来るけど家は別。実家暮らし。富永の家って知ってる?」
「シュネーズのことを聞いた時に言ってなかったから知らないだろ」
「そうだよな」
富永さんの私への質問は、広いクローゼットにプラケースを運ぶ二人の間で終わったようだ。
「俺の母親が富永。食事しながら説明する」
社長…終わってなかったの?別に興味ないんだけど…
でもね、ここにはヤツの心配がないだけでなく、他の虫たちの気配が全くしないことに本当に安心していた…地面から遠く離れたパラダイスだ。
「ぇ…このお寿司は……どこから登場…?」
3人とも普段着に着替え…って、やっぱり富永さんの着替えもあるんだ…私も着替えたら、見るからに高級なお寿司がダイニングテーブルにドーンと乗っていた。
「この2階にある寿司割烹。何、飲む?」
「都志、伍代さんにやらせてあげたら?」
「だな、自由に使えないと遠慮するよな。こっちおいで」
ぇえぇぇ…っ…っと……その優しい“こっちおいで”は、付き合ってる二人でしかダメなレベルの糖度に聞こえたんですけど?倒れた後遺症か…
「どうして拒否?」
「あ、スミマセンッ…拒否ってないです、行きますっ!」
後遺症を疑い頭をブンブン振ったから、社長の優しい申し出を拒否したと思われたじゃないか…
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