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「…何もない冷蔵庫……どうやって生きていくんですか?この水とお酒?」
なんだこのキッチン…
「伍代さん、ここの駐在秘書で、そのあたりも何とかしてやってくれたら助かる」
「どういうことですか?」
富永さんの言う“駐在秘書”って、そんなのあるの?
「家政婦になれと言ってるんじゃないけど、伍代さんが料理した時に一緒に作っておくとか、その程度の世話」
「世話って言うな」
「世話だろ?都志は食べること、自分でやらないんだから」
「あの…ついでとおっしゃるのはわかるんですけど」
私はお茶のペットボトルとグラスを持ってテーブルに戻る。
「こういう高級食に慣れた方に食べてもらうようなご飯を私は食べないので…お口に合わないと思…」
「合う」
「…………あまりお味にこだわりがない方?」
私に被せて“合う”と言った社長は味音痴なのかもしれない。
よく冷えた冷酒を手にした二人は、私にもと聞いてくれたけど、今日は倒れたからアルコールはやめておく。いつぶりのお寿司だ…
「では…遠慮なく……すみません、こんな食事をいただくことになって………明日からお返し出来るように頑張ります。いただきます…」
「どうぞ。返すことはないがな」
「はい………すみません、社長…ネタの説明出来ます?このあたり…分からないです」
「社長は無理。社員に寿司ネタは教えない」
「え、あ、それ…何?美味しそう……でも分からないものは…ちょっと…食べちゃった…」
私が分からないと言った場所から一貫取った社長が美味しそうに食べてしまう。
「伍代さん、もうね、酒飲んでプライベートな時間だから社長っていうのは嫌だってこと。都志って言ったらいいんじゃない?」
「無理でしょ?富永さんが教えてくれたらいいです」
「いまのはノドグロ、これがカンパチ、トビウオ………」
社長…結局…教えてくれるの?いやいや…マグロやエビは私も分かりますって。
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