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「いつも年末に実家でお寿司を食べるんですけど……こんなに美味しいお寿司は初めてです…倒れた人と思えない食べっぷりを披露してしまいそう…」
炙ってあるノドグロと、コリコリがクセになる活けバイ貝が特に好き。
「さっき見た職歴書、履歴書、奈津菜の実家は遠いな。いつも飛行機?」
社長はプライベートタイムで伍代と呼ぶのをやめたようだ。
「はい、飛行機です」
「大学がこっちになってた。そこから一人暮らしを?」
「一人暮らしは就職してからの4年目です。大学の1年の時は学生寮に入っていて、そのあと卒業までの3年間はちょうど兄がこっちに勤務していたので一緒に」
「お兄さんは、そのあと転勤?」
「はい、海外へ」
「そう。さっきチラッと、ヒロは実家暮らしと言ったけど、そこに俺の母親もいる」
会長の再婚は聞いていたから、別れた奥さんが社長の母親で富永ってことだね。
聞いています、と社長を見て頷き、中トロにいきかけて…残り1個だからやめておこうかとお行儀悪くお箸を止めると
「そのままいけ。手でもいい。うまいだろ?」
「…遠慮なくいただきます、社長…」
「学習しろ」
「……………と……」
名前呼びを催促された。うーん…社長なんだよ………あ、あ、そうだ、お父さんが昔好きだって言ってた“X”だったみたいな人と同じだよ。都志でなく、ローマ字変換すれば余裕で呼べる。お父さん、ありがとう…
「えっと…ありがとうございます。遠慮なくいただきます…Tо…」
「なんだ、その“デス、マス”」
そこも?富永さんを見たけど、スッとキッチンへ立ってしまった…
「………ふーっ…ありが都………志…」
“と”がひとつって…ちょっと失敗だけど、いいよね……
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