再び…辞めさせていただきます

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「あの…これって…富永さんも?」 「ヒロは富永でいい。で、富永にいるという母が…」 富永さんの名前呼びをピシャリとシャットアウトした社長が語ったのは、富永家とシュネーズ、そして現会長のちょっとしたお家騒動だった。 シュネーズは元々、社長の母親の洋服好きが高じて“お洋服屋さん”を始めた。それはまだ母親、雪子さんの結婚前の話で、雪子さんの父親が全面的に資金援助をして始まったことだった。 富永の家は社長曰く“小金持ち”で、富永さん曰く“資産家で超富裕層”だという。 ここで“お金持ちってことだな”と頷いた私に、富永さんは 「資産家と富裕層の定義は別だよ」 と説明を加えてくれた。資産家、富裕層、高所得者にはそれぞれ違いがある。資産家は保有実物資産が多い、富裕層は一定額以上の純金融資産を保有する人物や世帯、高所得者は労働によって得る収入額が多い人、という定義があって、お金持ちに定義はない…と。 なるほど…だけど、私の感覚で“お金持ち”でまとめていいや… お洋服屋さんがうまく利益を出せて、雪子さんが楽しくなってきた直後に、現会長の孝志さんと結婚。孝志さんがそれまでの会社を辞めて、お洋服屋さんを大きなセレクトショップ展開させて成功した。 そして孝志さんの浮気による離婚が決まった時、副社長だった社長…ややこしいな、都志は離婚はいいが再婚には反対。 筆頭株主である富永当主と、議決権のある株式の10%以上を保有する主要株主の雪子さんは、都志が社長になるならこれまで通り。だが、孝志が再婚して尚且つ社長のままなら、株は売却してシュネーズと縁を切ると宣言。 これによって、実権のない孝志会長と内縁状態の妻、山口佳代、その娘、金美(かなみ)が時折社内巡回する現状に辿り着いている…こういう話だった。 「雪子さんだから、シュネーズなんですね」 「そういうこと」
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