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「じゃあ…富永さんは次に“ご当主”というのになられる?」
もうお腹いっぱいで、ごちそうさまをしてから聞いてみる。
「いや、うちの親は次男だから。でも敷地内にじいちゃんの家とおっちゃん、長男のことね…の家とうちが建ってる。雪おばちゃんはじいちゃんところに部屋があるし、うちの母親とは友達だし、富永のどこかにいるって感じだよ」
すごいなぁ…想像しようにも…大奥みたいな建物しか思い浮かばなかった。
「今日は…病院へ社長の登場以降…初めて見聞きすることばかりです…それでもこんな高い世界でちゃんとお尻を浮かせずに座っていて…不思議な気分」
フッと笑った社長は
「すぐに慣れる。ここが奈津菜の当たり前の生活になる」
と言う。
「…そうでしょうか…」
「なる」
「仕事だけでも不安ですけど…」
「心配性か…」
「あの…笑われるかもしれませんが……本当のことなんです…」
「「何が?」」
「私……この時期は24時間神経質って感じで…虫嫌いが影響してずっとビビりながら神経を尖らせて…外で“ギ…”っとセミの1音目の途中で、どっちにいるかを判断して、そっちから来るかも…と心づもりしながら、身構えて歩くとか…そんなことの繰り返しなので、夏はどこにいてもビビりだと…兄にも友達にも、変則二重人格と言われます…」
恥ずかしい告白だったけど、社長は目尻を下げた?
「変則二重人格…見たいな」
「そんな…披露するほどのものではございません…デス…」
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