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「社長っ…」
急いで戻った社長室で、震える手でバッグを開けると
「やっぱり辞めさせて下さいっ」
常備封筒の辞表を社長のデスクにバンッ…と置いた。
無理無理無理無理…ムリムリ…私がG?ぞわぞわを通り越して…
「どうした?」
社長が椅子から立ち上がると、すぐに私の肩を抱く。そして私をソファーに座らせると、自分は床から私と向かい合う姿勢で震える手を握った。
「出るはずもないのに…その青ざめ方?他の虫も出ないはずですけど…」
出ませんっ、そんなに何度も出てどうするんですかっ…富永さんも社長の後ろから、私を見ている。
「奈津菜。言えることを言え」
「……Gって…」
「アレのことか?」
「………………私…」
そう言ってからとてつもなく悲しくなって涙が溢れた。自分がGと呼ばれる日が来るなんて…死の宣告を受けたのと同じこと。
「誰かが奈津菜をそう呼んだ?」
コクン……認めるのも悲し過ぎて涙が流れる。
「伍代のGか…?」
それはそうなんだけど…受け入れられるはずがない。
「仕事の出来る奈津菜へのやっかみか…」
「だろうね、思っていた以上にリモートでも仕事をこなしていることは皆が分かっているから」
「……そうで…あっても………Gなんて………無理…」
「当然そうだよな。受け入れられることではない…が、聞いてしまったからには奈津菜がずっと気にするのも事実じゃないか?」
仕事を辞めようが…伍代である限り思い出すだろうね…
「俺と結婚しよう、奈津菜。今すぐ、花城奈津菜だ」
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