辞めさせていただきます

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コツ…コツ… 社長の後ろからもうひとつの靴音がして、ピタッと社長と並んだ。 「伍代さんですね?」 二人目にも聞かれてる…いけない…ナゼ?が複数浮かんで、ぼーっとしてしまった。 「はい」 と応えながら立ち上がる…うん…よいしょ…となるのは許して欲しい。 「すみません…」 「座ったままで、どうぞ。体調は?」 このベンチ椅子に座ったままで、高身長の社長たちを見上げる方がしんどい。 私が倒れる時、後ろから手を伸ばしてくれた人がいたらしく、抱きとめはされていないけど、ダイレクトに床に落ちてはいない。それでも上司のデスクか床で腰を打ちつけた打撲があるようだ。立ってしまえば大丈夫。 「問題ないので、もう帰っていいと先生に言っていただいてます…会社からの人が来ると聞いて待っていたんですけど…はじめまして。伍代奈津菜です」 うん?はじめまして…は…マズかった?二人揃って微妙に表情が動いたよね。でも喋ったこともない。 「はじめまして、シュネーズ社長、花城都志(はなしろとし)です」 「社長秘書、富永寛也(とみながひろや)です。このまま帰っていいなら、会計に行ってきます」 「あ…私が…」 「会社でのことですから、こちらで」 「…ご迷惑をお掛けしてすみません」 コツ…コツ…コツ… 病院の廊下って硬いのだろうか…やけに靴音が響くな… 「辞表を出したと…これですね。救急車が来てから、伍代さんの部署で分かる範囲の事情を聞いて預かって来ました」 社長がスーツの内ポケットから出したのは、私が上司に提出した辞表だった。
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