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「おはようございます…遅くなって申し訳ございません」
声がだんだんと小さくなるのはしょうがないよね…一番近くに
“…ウケる…Gさんコソコソリモート中♪”
と笑っていた石野さんのデスクがあったから。
「私の秘書業務が急ぎであったもので、彼女に手伝ってもらっていたんです。こちらの遅れが発生していれば、私もお手伝いしますが?」
富永さんは私に先を促しながら、ゆっくりと部屋を歩き始めた。私は上司、名高課長のデスクへ行き、今日の目的である資料を彼女のパソコンで見せてもらう。誰もがアクセス出来る資料ではないと、こういうケースがたまにあるのだ。
私が2、3の質問をし終わる頃
「まあ、私に手伝えとは言いづらいでしょうかね」
ゆーっくりと部屋を一周した富永さんが、上司の横に立った。私と向かい合うのはおかしいだろう…私は上司に礼を言って部屋の出入口を目指す。
「少し前に聞いたんですよね」
はっ?富永さん?
「この階の給湯室でぺちゃくちゃと業務に全く関係ない話を複数人でしているのを。まだ何時ですか?いくらなんでも休憩には早すぎる。その無駄な時間で自分の業務を他人に回すなど、起こるとすれば…出来る者の負担が増えるだけ。そのあたりは名高課長が把握しておられるとは思いますので、あとでお話を聞かせて下さい。たった5分のおしゃべりを3人ですると15分のロス…そんなことで発生する残業代を支払うつもりはないというのが社長の意向です」
ソワソワする人がいるよ…そこまで一気に言うの?…と、彼は止まったわけではなかった。
「会社側も認識して放置は出来ませんので、対応策として、この階の給湯室は閉鎖します」
ザワ…ざわざわ…
「今日中に冷蔵庫の中の私物は撤去してください。本日修業後、給湯室入口を封鎖します」
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