頑張ります

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「ちょっと…それは…」 という声がいくつか上がるのも無理はない。 「この階の給湯室は会社のサービス設備です。来客対応のない階ですから業務上の必要はありません。空調などの電気設備、消防防災設備など義務付けられた設備は揃っていますし、法令点検も受けています。それ以上のサービス設備でしたが、会社の損失を招くようなら撤去して当然というのが社長の考えです」 素晴らしい…素晴らしいと思ったのは、富永さんが“社長の考え”だと言い切るところ。きっと社長は自らが矢面に立つ方針で経営を続けているのだろうと思うと、二人の信頼関係と手腕は素晴らしい。人のせいにしないのはカッコいいよ。 「ハァ…誰よ…私は今日、まだここから離れてないんだけど?」 ああ…こういう人、絶対にいるのよ…もう犯人探し?でも私の…G出世だと噂があったというのは、こういう人が言っていた可能性もある…と…何の根拠もなくごめんなさいだけど、思ってしまう。 「今日だけでなく度々あったことだと想像出来ますが…名高課長、いかがでしょうか?皆の動きを把握されていると思いますが」 「はい…給湯室はあまり利用していないので…」 「そうでなくって、離席の様子を把握されていませんか?必要以上に離席回数が多い、その時間が長いとなると、社員の体調をまず聞いて対応するのが、この見渡せる席へ着く者に課された業務に含まれます。不必要な離席なら…あ、社長」 びっくりした…出入口に立つ私の隣に社長がスッと立った。いつからいた? 「二人が遅いから問題があったのかと来てみただけですが…課長にはすぐに部長と面談してもらいます。これ以上は富永の仕事でない」 「はい、承知しました」 「今ここに来る前に、この部署が日々相手としている各ブランドの担当者に簡単な任意のアンケート協力の要請をしました。外部から弊社社員の評価をしてもらうのも重要かと考えての試みです」 「社長がもうメールを送られた、と?」 富永さん…聞き返しながら口角を上げたよね…
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