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「それを受けて、今後の異動はあり得ます。もちろん、いきなり辞令を出すような横暴なことはしませんので安心して下さい。きちんと内示から手順を踏みます」
さすが従兄弟というのか…花城より、富永の血が強いのか…似てる…
「なんか……伍代さんの騒ぎが発端となって、富永さんに会うことが増えたと思えば…社長まで…」
近くの石野さんが突然喋るのでびっくりした…この季節、びっくりしがちだから…
富永さんに会うっていうのはパソコンを取りに来てくれたことかな…
「伍代さんがうちらのことを社長に悪く言ってるんですか?」
ヒュッ…息を飲んだ私の隣で
「失礼ですが、あなたの名前は?」
社長が丁重に石野さんに聞く。その丁重さは“落ち着け”と言われているようだった。
「石野です」
「石野さん、あなたには早急に異動先を探さないと…富永、人事部長に連絡」
「はい」
「ちょっとっ、どういうことですかっ?」
ガタッと立ち上がった彼女の椅子が、こちらへ突っ込んでくるのが見えるけど、タブレットを抱える手は離せない。蹴り返そうか…と足を構えた瞬間、ふっと笑った社長がガシッと長い手でそれを止めた。ああそうだ…蹴り返さなくても、足で止めれば良かったんだね。
「彼女は私にこの部署の話などしません。業務も非常に黙々とこなすタイプで、無駄話はしない。それはいいとして、あなた…失礼…石野さんは私が一社員の告げ口で動くような信頼出来ない社長だとおっしゃった」
「そんなこと言ってない」
「言ったのと同じことです。一社員の口から聞いたことで人事異動なんてしていたら、会社は成り立たない。でも私に信頼がないようですので、本社から離れてお客様と近いところで力を発揮された方がいいですね」
店舗へ異動ってことか…
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