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「でも、頑張らなくていい。自然に俺と奈津菜の形が出来れば十分だと思う。夫婦っていう型はそれぞれでいいと思わないか?」
優しく後頭部を撫でながら、都志はとても静かに続けた。
「友達みたいな夫婦でも、コントしてるような夫婦でも、ライバルで好敵手みたいな夫婦でも…本人たちが心地よい幸せを手にしているなら、どんな型でもいいと思う。だから奈津菜…」
「…うん?」
「誰かの真似もしなくていい。カリスマ奥さんとか主婦?そんなのもいらない」
「うん」
「俺、ファッションのトレンドを見るのに、有名人の発信しているものを定期的に見るんだ」
「うん」
「あんな食事や弁当にすごく“教えて〜”とか“参考になります”とかコメントが殺到するけど、あれはあれだけ整えてガッツリ収入に繋がるからやってる奴らが多い。家族の顔を思い浮かべて作ってるんじゃなく、画面の向こうの世界の人間をターゲットに作ってるんだ。だから俺はあんなの羨ましいと思ったことないし、奈津菜が俺の仕事終わりに合わせて作ってくれた味噌汁の方が嬉しい。だから何も頑張らなくていい」
「うん…都志もね。お仕事は頑張ってばかりだろうけど…おうちでは自然に…」
と私が言ううちに、彼の腕は緩くなり、さっきまで後頭部を撫でていた手はほっぺを撫でる。
チュッ…
「了解、自然にな」
チュッ…
……………はい………とても自然に唇が重なってます…
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