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美味しい、美味しいと大きな口を開けて食べ、食べろ、食べろと私に勧める都志は、会社で“私が…”と言っている社長と同一人物と思えない。
働く者は皆、いくらかそういう部分があるんだろうね。外では鎧も猫も被ったりして…
「都志、好きなものは?」
「奈津菜」
「………」
「悪かった…催促されるまで好きと言わないのは、夫として不出来だよな、ごめん」
「うううううん、十分っ…美味しいとか褒め方とか、私が調子に乗ってしまいそうなくらい十分だし、不出来なんてことは一切ないっ。じゃなくってね、ご飯。ご飯の話だよ。好きな食べ物は?」
「奈津菜飯」
即答…ありがとうございます…でもあまり参考にならないな…
「好きなメニューは?」
「奈津菜メニュー」
「………うーん…あ、給食で何が好きだった?」
「カレー」
「給食のカレー、美味しいよね」
「まあ、普通にな。おかわり出来る率が高かったから一番好きだった」
あまり参考にならないか…
「おうちの献立では何が好きだった?」
「好きな物を選べるほどの料理を母親がしなかったからなぁ…鍋かホットプレートで何でも焼くことが多かった」
なるほど…それもあって、こんな庶民夕飯を豪勢だと言うのかな?高級寿司などはたくさん経験しているだろうけど、家庭料理には慣れていない人なのかもしれない。
「都志、明日もご飯作るから、いーっぱい食べてね」
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