凄腕社長の抱え込み愛

驚きの連続です

「給湯室で噂話をする自分と周りが同じだと言っておられる？」
「なっ…」
「篠田さんかよ…」
「最悪…」

富永さんの声に絶句の篠田さんと、給湯室閉鎖の犯人を知ったという反応の周辺…

「一人で噂は出来ないので彼女だけを責めることはないですよ」

フォローになってるのか…都志…

「じゃあ、ここでさっさと行きましょう。皆の業務の手が止まっていますからね…」

人事部長の言う通りだ。誰も仕事をする雰囲気にならない。

「篠田さんは神戸店、福田さんはEC運営の出荷業務担当にそれぞれお願いします。これは内示であります。内示は人事異動の業務命令であるため、基本的に拒否することは出来ないものですが、正当な理由があるのであれば、拒否の申し立てが出来ます。なお、2週間後の異動となりますことを併せてお伝えします。以上、ご質問は？」

人事部長は慣れたセリフという感じだね…

「……正当な理由って何ですか？」
「入社時の雇用契約書の内容と異なる、やむを得ない事情がある、会社側の権利の乱用、給与が下がる、以上4パターンですが、雇用契約書で勤務地や職種が限定されておらずひとつ目は該当しません。権利の乱用については、重要ではない仕事や慣れない仕事に異動させて自主退職に追い込むなどの嫌がらせ行為が明らかであればその不当性に訴えて無効にできるケースがありますが、今回はこうした取引先の評価などを参考にした決定ですし、どれも重要な仕事ですから該当せず。給与については、職務内容に応じた給与体系が設定されている場合は変動があっても合法的といえるのですが、従業員の不利益となるような大幅な減給は認められないことも承知していますのでもちろんその範囲内の対応をします。やむを得ない事情がございましたら、出来るだけ早いうちに私の方へ申し出てください。よろしくお願いします」

さすが…人事部長ってこういうことが仕事なのか…と改めて知る。

「私は受けます…部長。何なら、この空気でやりづらいので…出来るだけ早くEC運営へ回りたいです…柿本部長、ここの引き継ぎの指示を頂けますか？」

福田さんは内示を受けるようだ。