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車から降りても、バッグは富永さんの手に。
私は社長に肩を抱かれて…
「あの…どこへ向かっています?ここは何かオフィスビルですか?」
やっとそう聞けた時には高速エレベーターの中だった。
「1階から3階は商業階、4階から33階は住居階の複合ビル」
社長の説明が分かったような、なんでここ?と思うようなままエレベーターが止まったのは30階。
「…住居階ですか?」
「うち」
はっ?社長の最短の返事にぎょっとしながらも、口から洩れたのは
「……憧れの…高層階らいふ…」
という呟きだった。
「高いところが好きなのか?」
ホテルの廊下を歩いているのかと勘違いするような廊下で聞かれ、思わず憧れの音色を乗せて応えた。
「高いところが好きっていうより……虫率です」
「ムシリツ?」
「中でゆっくりと」
と言った富永さんが重厚なドアを開けてくれると、私の知るマンションとは全く異なる空間が広がっていた。
「どうぞ、入って。座って話をしましょう」
「……失礼します」
社長に続いて部屋に進むのだが…
「社長が“うち”とおっしゃったのは…社長が持ち主の不動産という意味ですか?」
「俺の部屋だが?毎日ここで寝起きしてる」
モデルルームのような空間が玄関ドアからずっと続いていますけど?
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