side 都志

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奈津菜と一緒に眠る… 煩悩を捨てて…と思えば思うほど、煩悩にまみれる自分が滑稽で、そのすべてを奈津菜の魅力のせいにして抱きしめる。 このまま俺の腕の中で…このマンションで俺だけと生きてくれたら…そう思うこともある。奈津菜が望めばいつだって…しかし… 黒光りするアイツの出現によって、彼女がこれまでしっかりと責任持ってやってきた仕事を中途半端に遠ざけているままでいいのか、とは最初から考えていた。リモートは一時的な避難場所になっても、会社全体を見た時に無理があることは否めない。 アイツの駆除と、噂話の根源の駆除が出来れば、奈津菜が元の業務に戻れると考え、奈津菜を俺の近くに置いたまま策を練った。 毎日、キスとベッドで抱きしめていることに彼女の嫌悪感がないスタートから、徐々に体の力は抜けている。夕飯を作ってくれる彼女は、日に日に“都志”と当たり前に呼ぶ。 そんな奈津菜を見ていて、ここで一人で仕事をするのは彼女の良さが発揮出来ない。そう判断した俺は、会社で噂話の奴らの駆除に動いた。 取引先からのメールを皆が読み始めた静けさの中で、奈津菜だけが足元を覗いてキョロキョロ、バタバタ…可愛い不審者になっている。この季節のゾワッ…がきたのか… 第三者の評価というのは見事に問題を浮き彫りにしてくれた。 奈津菜が納得して働けるなら、ここがいいだろう。そしてここに奈津菜が戻るなら、給湯室と冷蔵庫も戻してやらないと…と思っていたら、出張後に困っている枝野さんの願いをうまく聞き入れる形で整えることが出来た。これで快適に、これまで以上の力が発揮出来るはず。 篠田はすぐに退職を申し出たし、安心して奈津菜を戻したのだが、やっかいな奴らは他にもいた。
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