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仕事は、担当営業さんが枝野さんと、30代のデキる男女、立野さん(男)と松井さん(女)、それから田村さんという40代女性の各年代のデキる人ばかり4人になった。
枝野さんが篠田さんの担当を持たれたので実際には5人分の事務業務を受け持つことになったから大変ではあったけど、デキる人たちは私の業務量を見て自分で処理する部分を増やしてくれたりするので問題ない。
都志はうちで“大丈夫か?”と私に確認してくれていただけでなく、柿本部長や枝野さんにこっそり確かめてもいたようだ。
公私ともに支える、気遣う…ってこういうこと…
そんな風に感じるごとに、ちゃんと都志に好きだと伝えたいな…と私は思い始めていた。
枝野さんのおかげで再び使えるようになった冷蔵庫に、私は乳酸菌飲料を入れておく。そしてお昼ご飯のあとに、給湯室でピッと小さな蓋を開けてクイッとそれを飲む。
今日もその飲んだあとの小さなプラゴミを洗っていると
「キャハハハ…」
何だか楽しそうに弾んだ笑い声が廊下から聞こえた。
私が部屋へ戻ろうとすると、その笑い声の主の想像がついた…会長と奥さんと娘さんが廊下を歩いているから、娘さんの声だったのだろう。少し離れていたけど、頭を下げてからデスクに戻る。
「あの巡回か、何か…意味あるのかな?」
「会長も仕事してます、って見せておかないとダメなんじゃない?」
「給料もらってるから?」
「さあ?会長一人が歩けばいいんじゃないのかな?」
「きれいな奥さんと可愛い娘を見せたいのかな?」
後ろからの小声の会話が質問の応酬で可笑しい…でもこの数日後、話をしたこともない奥さんと娘さんに声を掛けられるとは思ってもみなかった。
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