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「だ~か~ら~ぜーんぶあなたの思い込み。厚かましい心得違いね」
「都志さんも人が悪いわねぇ。婚姻届まで書いて女の子を騙しちゃうなんて」
「はっきり言ってあげるわ。あなたが記名したという紙切れは提出されていないんですぅ」
「彼のお遊びに私達は目を瞑るとして、あなたにはすぐに出て行ってもらわないと、この出張後の夏季休暇に娘と彼の結婚式もありますし…彼にとっても不都合な噂になりかねないわ」
次々と聞かされる知らない事実に、汗がじわっとどころではなくなってくる。
「今日、もうあなたの持つマンションの鍵はすでに使えませんから」
「コンシェルジュにもあなたの出禁は伝わっています」
「彼のためもおかしな行動はくれぐれも控えてください」
そう言い放った二人が給湯室から出て行くと、やっと呼吸が出来た……
「あれ?奈津菜さん、どうかしました?」
入って来た枝野さんがお弁当箱を洗うようだ…と見ながらも、頭と心がぼーっとしている。
「え…体調悪い?」
「…いえ…食べ過ぎました……戻ります」
「僕、胃薬なら持ってますからね」
「ありがとうございます…」
愛妻弁当を食べてる枝野さんが胃薬って…
そう思いながら午後の業務に戻る…そして何度も
夢見てたんだ…心得違い…そうかもしれない…あまりにも出来過ぎたシンデレラストーリーだもの…
とグルグルと胸の奥で感じていた。
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