心得違いのようです

5/7

3179人が本棚に入れています
本棚に追加
/61ページ
「だ~か~ら~ぜーんぶあなたの思い込み。厚かましい心得違いね」 「都志さんも人が悪いわねぇ。婚姻届まで書いて女の子を騙しちゃうなんて」 「はっきり言ってあげるわ。あなたが記名したという紙切れは提出されていないんですぅ」 「彼のお遊びに私達は目を瞑るとして、あなたにはすぐに出て行ってもらわないと、この出張後の夏季休暇に娘と彼の結婚式もありますし…彼にとっても不都合な噂になりかねないわ」 次々と聞かされる知らない事実に、汗がじわっとどころではなくなってくる。 「今日、もうあなたの持つマンションの鍵はすでに使えませんから」 「コンシェルジュにもあなたの出禁は伝わっています」 「彼のためもおかしな行動はくれぐれも控えてください」 そう言い放った二人が給湯室から出て行くと、やっと呼吸が出来た…… 「あれ?奈津菜さん、どうかしました?」 入って来た枝野さんがお弁当箱を洗うようだ…と見ながらも、頭と心がぼーっとしている。 「え…体調悪い?」 「…いえ…食べ過ぎました……戻ります」 「僕、胃薬なら持ってますからね」 「ありがとうございます…」 愛妻弁当を食べてる枝野さんが胃薬って… そう思いながら午後の業務に戻る…そして何度も 夢見てたんだ…心得違い…そうかもしれない…あまりにも出来過ぎたシンデレラストーリーだもの… とグルグルと胸の奥で感じていた。
/61ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3179人が本棚に入れています
本棚に追加