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ひろっ…
っていうか…7月の暑い日に部屋へ帰った時に涼しいってどういうこと?
私がキョロキョロと部屋を見回すうちに、社長はリネンスーツの上着を脱ぎ、大きなソファーへと腰掛ける。
「どうかしましたか?座って」
「あ、はい…太陽が近いのに涼しいなと思って。廊下も快適でした…」
エアコンは一般的な家庭用と違って、会社やお店で目にする天井埋め込みタイプのようだ。
「公共部分は年中空調が効いてる。ここはこれでリモート操作です」
社長はそう言ってスマホをテーブルに置き、その隣に私の辞表を置いた。
「どうぞ」
富永さんがアイスコーヒーを入れたグラスをみっつ用意して社長の隣に座る。私は
「失礼します…」
と彼らの向かいのソファーに座った。
「いただきます…喉、カラカラ…」
「そういえば、汗もかいてたと聞いたので、水も持ってきます」
「すみません…病院で気がつく前に、短時間ですけど点滴を入れてくださったので大丈夫だと思います」
富永さんがもう一度立つのを見ながら、私は遠慮なくアイスコーヒーをコクコクと飲む…わっ、香りがいい…
「伍代さん、病院で気がつくまでのこと…これを出した経緯など、聞かせてもらえますか?」
花城社長はじっと私を見て、自分で話せと私に促しているようだった。
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