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「私はここで仕事をしますが、伍代さんはゆっくり社長に分かりやすく説明してください。これまでになかったことですから...」
富永さんは、デタッチャブル型PCのディスプレイ部にキーボードをつけて社長の隣で仕事を始めた。
「そうですよね…これまでになかったことですよね…」
自分でもそう思う。
「何もかもが経験したことだけで回る人生なんてないだろう。だからそこは構わない」
「はい…あの…私はアレが…特別苦手、苦手以上に無理で…」
アレ、で分かってもらえるかと、社長に視線を合わせると頷かれたので、視線を彼の顎先に落として続けた。
「これまでにも…アパートの廊下にいた…とかで引っ越ししたり…」
「自室にデタのではないのに?」
「自室には出ませんっ…」
想像しただけでもトリハダが立ち、自分の両腕を撫でる。
「徹底的に駆除対策をしてますから。寒い冬の間もずっと…室内にあれこれ置いたり、撒いたりするだけでなく、段ボールなどは徹底排除。生ゴミが部屋で一晩越すことなんて一年中ないんですっ。でも…それでも…ベランダに隣から……うちの方にひょっこり足が見えて…引っ越したことも…」
はぁ…嫌いなモノを語るのはストレスだ。
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