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「業務中に失礼します。少しだけ、皆さんに報告させていただきたいことがあります」
社長が部長のデスク横から部屋を見渡した…と、すぐに
「私と伍代さんは先日結婚しました。部長は知っておられましたが、皆さんへの報告は本日になってしまったことお詫びします」
緊張のカケラもない彼がさっと頭を下げた。
「「「「ぇええ…」」」」
「「「「いつ?」」」」
という声の中
「なっちゃんもこっちにおいでよ」
富永さんが、これまた緊張のカケラもない様子で私を手招きした。
「「「「「なっちゃん?」」」」」
「プライベートでは、なっちゃんですよ?従兄弟の奥さんですから、ね?」
「……富永さん…は、いいかもだけど…私は緊張してるの…」
お願いだから調子に乗らないで…
「あらー伍代さんのその富永さんのあしらい方は仕事じゃないね。へぇ~おめでとう」
と田村さんの声を聞きながら、社長と富永さんの間に小さくなって立った。
「奈津菜、伍代のままか、花城か、このあとの業務はどうする?」
「ちょっと待って下さい、社長」
と言ったのは枝野さんで
「そんな事務的に報告しなくても…もっとゆっくりと奈津菜さんの声も聞かせてもらえたらいいんじゃないですか?おめでとうございます、と言う間もないですよ」
と苦笑している。
「いつ?とも聞こえていたが、奈津菜と俺の記念日を人に教えるつもりはない」
「……………………」
枝野さんはポーッと口を開けて固まり、他の人も似たような顔になった。
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