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「嫌いなモノの生態に詳しいんだな…」
ゾワッ…好きで詳しくなったんじゃないっ、と思わず社長を睨む。もう辞めるんだから、どう思われてもいい。
「敵を知り、分析しないと勝てませんから」
「同感だ。俺もそう考えて仕事をしている」
あれ?同意された…?
「それじゃ…部屋の掃除なんかを徹底していると?」
「当然です。ヤツと一緒に暮らすことは死を意味するので」
あ…
「ちょっとっ…今お二人ともビミョーに笑いましたね?これだから嫌なんですよ…どこでも、誰にでも、普通の虫嫌い程度に思われてしまう…だいたい、こんな、ハエもアイツも飛んで来ないような羨ましい、夢の空間に暮らしている人には理解出来ないんですよ。夏の間、ずーーーーーーーーーっと、神経を尖らせて生きてる苦悩が社長には理解出来ないんです。年々、夏が長くなってホント生きづらい日々です…」
言っていて悲しくなってきた。
「夏が長いのはそうですね。雨の降り方と気温が、年々アジアの熱帯気候に似てきている」
「そうなんですっ」
私は社長の言葉に身を乗り出し、テーブルを掴んで頷いた。
「だから…だから……年々ヤツの巨大化の噂を耳にして……いっそ、アイツのいない国へ移住するのがいいんですけど、毎年引っ越しすることで貯金も出来ず…移住なんて一生かかっても無理…はぁ……」
「伍代さん」
「……はい」
「今日、見てないんですよね?それなのに倒れるほど?」
「…処分の順番がくるかもって……そういう話をされたので…」
「なるほど。うちの会社で初めてデタと聞いたんですが、段ボールはたくさんあるな…」
そうですね…アパレルセレクトショップ大手【シュネーズ】花城都志社長…事務所ビルにEC運営階もあるので、段ボールはたくさんでしょう…
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