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「俺の奈津菜に手を出す奴がいたら即刻報告してください」
「都志っ、いないからやめてっ、ストップッ……」
あ……やってしまった…と思った時には大きな拍手と、ひゅ~ひゅ~と囃し立てる声に包まれる。
「社長じゃなくって…ふ~ん…奥さんだもんね」
「ですねぇ、新鮮だわ」
「可愛い新妻だよね」
「当たり前です、俺の奈津菜なんで」
堂々と私のほっぺを撫でた都志を睨んだけれど…
「妻なんで…仕方ないね…」
私も皆と同じように笑うしかなかった。
これも全部彼の計画通りだとしたら…シュネーズを順調に走らせ続ける若き凄腕社長と言われる花城都志は、恋愛に関しても凄腕なのかもしれない…
「でも…今はちょっと失敗しましたけど…会社で名前呼びはやめてください、社長。あ、富永さんのなっちゃん呼びも会社ではダメです」
「枝野さんは名前を呼んでる」
「ぇええええぇぇ…しゃ…っ…社長っ?僕ですか?おかしな絡み方されたなぁ…」
「冗談です、枝野さん。これからも奈津菜をよろしくお願いします」
「分かりづらい冗談ですね…びっくりした…奈津菜さんは分かってた?」
「いえ…残念ながら全く…たぶん富永さんだけが分かってます」
「なっちゃん、正解」
はぁ…二人とも奈津菜になっちゃん継続だよ…
「呼び方くらいいいじゃない、伍代さん?そのうち“おい”とか“ママとか”呼ばれるようになってたりしてねぇ…ふふふっ…」
「田村さん、俺の奈津菜が“おい”なんかに変換されることは一生ありませんよ。ママだって、俺目線の言葉ではあり得ない。ちょっと伍代さんを1週間借ります、とこちらで伝えてから、独り占めすることはありますので、そこも皆さんよろしくお願いします」
ああ…彼の抱え込みはちょっと重いくらいが心地よい…
【完】
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