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「都志、いい加減仕事しろよ」
「うーん」
「ったく…どれだけ見てんだ…」
「……」
「9月の韓国は日中まだ暑いんだ。それほど観光は出来ないって」
「保冷バッグな…」
「はっ?」
「レストランはもう考えてあるが、それ以外にも奈津菜が気になる食べ物はすぐ買うだろ?ホテルで食べたり…ってなると保冷バッグ、よし」
今日は従兄弟組はマンションで仕事の日、どうも花城都志は仕事をせずに韓国旅行の下調べをしているらしい。まだ見てる…
「日本より寒暖の差が出てくるってことは…その都度、着せ替えショッピングするのもいいな」
「……なっちゃんにんぎょー…」
「棒読みでも可愛いよな…なっちゃん人形か…」
「作るなよ?絶対に作るな!」
「ヒロが作るのは可怪しいが、俺が俺の奈津菜の人形を作ろうがいいだろ?ここに並べたり…」
「絶対にダメだ。絶対に離婚される」
「……わかった」
「ほら、仕事」
「あともう少し」
「なっちゃんに言っていいのか?都志は仕事せずに、ここでずっと韓国をバーチャル観光してたって」
「ヒロ…卑怯だな。離婚されるだとか、告げ口するとか、奈津菜を使って卑怯な手口だ」
凄腕社長を撮っているはずが…そうとは思えない言動が続き、カメラの誤動作を疑うレベルだ。
「じゃあ、終わらない分、ここで仕事してる?俺がなっちゃんの迎えに…」
富永寛也が言い終わる前に、おそらく凄腕社長なのであろう花城都志が目の色を変えて、キーボードを叩く。お迎えは譲れないらしい。なぜなら都志が迎えに行き、助手席のドアを開けただけで
「ありがとう」
と妻、奈津菜が可愛く照れるから。
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