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「すみません、お騒がせしました!」  優さんが弘からマイクを奪って話し出した。   「それでは聴いてください! Switch の『茜色のたからもの』」  ドラムスティックが四拍子を刻む。俺と弘は、そのリズムに乗っかって、演奏を始めた。  優さんのドラムは安定している。重低音が轟き、煌びやかなシンバルが曲を導く。それに弘のベースが切ない響きを伴って、混ざった。  俺はメロディを乗せる。三人で考えた、「ノスタルジー」な表現から離れないように、心が熱くなるような音で。  演奏が佳境に入った――。    茜色に 染まる坂道を  駆け出したい想い こらえた  人よりも すこし小さな手  伸ばしても 届かない  君はもうここにはいないから  広がる茜色 僕は思い出すのさ  君に出会えた春 優しい瞳  ぼくは 永遠(とわ)に忘れない  君と遊んだ夏 素敵な横顔  La la la......    俺たちの演奏は、俺の失態を除いて、大成功で幕を閉じたのだった。
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